コストライフの防災ブログ改め「新しい生活様式(New Life Style)」ブログ

~新型コロナと共存しつつ、社会経済活動を行っていくために、感染拡大を予防する「新しい生活様式」の取組を定着することが重要です。一緒に取り組んでいきましょう~

#372 大企業50社を実名公開、コロナ不況「生き残る会社・心停止する会社」

いつキャッシュは底をつくのか

 

日本経済が、死に瀕している。

 

 今期決算で、丸紅は1900億円の赤字に転落。また、今年1~3月でJALは233億円、ANAは594億円の赤字を計上したと発表。ユニクロファーストリテイリングも、今年8月の決算が38%の減益になる見通しを明らかにした。コロナによって、あらゆる産業が壊滅的なダメージを負いつつある。

 

 コロナとの戦いは、1年は続く可能性のある長いマラソン――。ノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥教授はそう言う。仮に緊急事態宣言が一時的に解除されることはあっても、今と同じような状況が、半年や1年、それ以上続くかもしれない。

 

 そうなれば、名だたる大企業ですら手持ちの現金がみるみる減少していく。カネが回らなければ企業は死ぬ。どんな有名企業であっても、マネーという血液が止まれば、破綻はまぬがれない。

 

 そこで本誌は、大手企業50社を対象に、コロナ禍における売り上げの減少が、企業の現預金をどれだけの速度で食い潰すのかを試算した。1ヵ月の売上高が30~50%下落したケースを仮定し、下落分の損失が何ヵ月続くと、手持ちのキャッシュがゼロになるかを表にまとめた。

 

 実際には売り上げが8割減や9割減といった業界もあり、30~50%の下落で収まるか不明だが、それでも1年以内に現預金が底を突く可能性がある企業が多い。特にコロナの影響が大きい業界は今後どうなっていくのか。

 

●自動車

 

 トヨタは1兆円、日産は5000億円の融資をそれぞれメインバンクに要請したことを明らかにしている。日本を代表する企業でさえ、運営資金が枯渇する危険を強く感じているのだ。

 

 「トヨタでいえば、自動車の製造部門はほぼ無借金ですが、金融部門で20兆円超の有利子負債を抱えています。これは自動車のローンに当たる部分で、購入者の返済が滞り始めると、手元の資金がなくなって会社が回らなくなる可能性がある」(ビジネスリサーチ・ジャパン代表の鎌田正文氏)

 

 自動車業界のさらなる問題は、店舗が営業できず、新規受注ができないことだ。そのため、仮に工場を再開できても、ラインを100%稼働させられない。人件費がかさみ、リストラすれば生産能力が落ちてさらに製造が滞る。そうした負の連鎖が目前に迫っている。

 

 

●エネルギー

 

 工場や物流が停滞すると、資源を供給する商社やエネルギー業界のビジネスが成り立たなくなる。4月20日米原油の先物取引価格が史上初の「マイナス」に転じたのも、それを象徴する出来事だ。そうしたことから、先述の通り丸紅は赤字転落し、JXTGホールディングスも3000億円の赤字が予想されている('20年3月期)。

 

 「エネルギー企業はもちろん、総合商社も資源を経営の中心に据えて大きな利益を上げるビジネスモデルです。ただ、今回は製造全体が止まっているため、石油だけでなく、石炭や鉄鉱石など、資源全般の需要が下がっている。製造業が動かなければ、商社やエネルギー業界も連動して売り上げがどんどん減っていくことになります」(フィスコ情報配信部アナリストの小林大純氏)

 

コロナで死ぬか、大恐慌で死ぬか

 

 

●鉄道・航空  

 その資源を使う鉄道や航空などの旅客業界は、外出自粛の影響をモロに受け、未曽有とも言える苦境に直面している。

 

 JR東日本では、東京駅や新宿駅などターミナル駅の利用者数が3月末から8割近く減った。また、JR東海のドル箱である新幹線も、緊急事態宣言以降は利用者数が9割落ち込んでいる。

 

 鉄道はもともと、「不況に強い業界」と言われており、乗客がほとんどいなくなる事態など想定していなかった。

 

 「おおむね鉄道業界は、売り上げに対して現金が非常に少ない傾向にあります。圧倒的な利用者数と収入が、なかば保証されていたため、手元で動かせるキャッシュを用意していなかったと考えられます。

 

 列車の維持費や駅・線路の保守管理費などに加えて、新型コロナによって、大きな収入源だった駅ビルが営業自粛になり、今後テナント料の収入が減る可能性も高い」(公認会計士の川口宏之氏)  乗客数が減っても、運行本数は減らせないため、固定費がかさむ。緊急事態宣言が解除されても、テレワークやウェブ会議が定着し、乗客数が減ることは必至だ。天下のJRであっても、コロナからの回復は容易ではない。

 

 航空業界も同様だ。冒頭で述べたように、大手2社は1~3月で大赤字を出したが、緊急事態宣言により、自粛が強まった4月以降となると、それどころでは済まない。

 

 「大手航空会社は飛行機を停めているだけで、バカにならない停留料を空港に払わなければなりません。固定費が高いうえに、国交省などの規定により、一定数の飛行機はどれだけ乗客が少なくても運航する必要がある。5月末までは規定が免除される予定ですが、その後はどうなるか、まだわかりません」(経済ジャーナリストの松崎隆司氏)

 

●百貨店

 インバウンド需要はおろか、店舗休業で一般客の集客も見込めなくなった百貨店業界は、苦境に追い討ちをかけられた格好だ。都心の老舗も例外ではない。百貨店大手では、売り上げが半減した場合、わずか1~2ヵ月でキャッシュがほとんど消えてしまう計算だ。

 

 百貨店が生き残るすべはないのか。ファイブスター投信投資顧問取締役運用部長の大木昌光氏はこう言う。

 

 「大手百貨店が一般の小売店と違うのは、一等地に驚くほど多くの土地を持っていることです。景気悪化で地価が下がることも今後のリスクですが、今はまだそうなっていない。保有している土地を売る決断ができれば、当座はしのぐことができると思います」

 

 新宿から伊勢丹が、日本橋から三越高島屋が、池袋から西武が消える日が近いうちに来るかもしれない。

 

●旅行

 それでは、国内外の旅行客がほぼ絶え、苦しい状況にある旅行代理店はどうか。  「コロナの影響をもっとも受けている業種のひとつなのは間違いありません。ただ、材料や部品を調達する必要がなく、そのコスト負担は他業種より軽いと言えます。そのことから考えると、たとえばHISは、実際の数字以上にキャッシュを持っている企業と言えるでしょう」(前出・大木氏)  とはいえ、直面している現実は厳しい。

 

近畿日本ツーリスト」を運営するKNT‐CTホールディングスは、'20年3月期の通期予想を20億円の黒字からマイナス98億円へ下方修正、赤字転落した。旅行代理店各社でこの状況が続けば、今はキャッシュに余裕があっても早晩、限界が来る。

 

 コロナの影響を受ける企業は、その産業構造や持っている資金に違いはあっても、今は打てる手がない状況だ。ウイルスの封じ込めは同時に、企業の心停止という犠牲をともなう。

 

 「政府の経済支援で中小企業がなんとか持ち堪えたとしても、毎月数百億円から数千億円単位の固定費が流出していく大企業をいくつも救うことはどう考えてもできません。手元のおカネがなくなれば会社が倒産するのは、大企業も同じ。このまま日本経済がストップした状況が続けば、『コロナ以前』に戻ることは二度となくなってしまうかもしれません」(経営コンサルタント小宮一慶氏)

 

 コロナ収束は最重要課題だが、早く経済を動かし始めないと大企業の倒産ラッシュが起こる。コロナで死ぬか、大恐慌で死ぬか。政府・各自治体はもちろん、企業もそこで働く従業員も、最悪の二択を迫られている。

 

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コロナ危機で「生き残る会社・心停止する会社」

 

---------- 表の計算方法:各社最新の本決算をもとに作成。おおよその月別売上高が30%、40%、50%減少した場合の金額を求め、その金額で各企業の預貯金を割った。預貯金は決算書の「現金及び現金同等物」を参照した ----------

 

週刊現代」2020年5月2・9日号より

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