コストライフ㈱の防災ブログ

~命を守る行動を~

#353 テレワークで憂き目に遭うのはどんな社員か

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写真はイメージ

 新型コロナウイルスの感染拡大により、人の移動が制限され、政府は企業に対して出勤の抑制を要請している。コロナ禍によって半強制的に導入されることになったテレワークだが、うまくいかず、職場が機能不全に陥っているという話も出ている。
では、どのようにすればテレワークは円滑に進むのだろうか。そして、コロナ後の働き方はどのように変わるのか。
 現在、総勢5万人以上のテレワーカーを抱え、Google日本生命地方自治体などのテレワーク導入を推進するベンチャー企業「イマクリエ」の鈴木信吾社長にテレワークを導入する際の注意点などについて聞いた。

 

■テレワークを成功させる3つのステップ

 ──テレワークに切り替わった途端にレスポンスが遅くなる部下がいるかと思えば、SlackやZoomの扱いに四苦八苦するなど、突然のテレワークに混乱する職場があるようです。

 現在、テレワークの導入によって起きているトラブルの多くは、業務の大半をリモートで済ますという、テレワークの最終形態をいきなりやろうとすることが原因だ。テレワークを導入するには次の3つのステップを踏み外さないことが重要だ。

 まず、(1)効率化を図るために社内の業務を見直し、専門的で限られた業務をアウトソーシングすること。これができたら、(2)シニア人材や家族の転勤、介護で離職せざるをえない人など、オフィスに出社できない社員の受け皿としてのテレワークを導入すること。そして、(3)正社員が担っている現状業務を遠隔で行うこと。このうち(1)と(2)を経験することなく、いきなり(3)を始めたら混乱が起きるのは当然だ。

 これまでの働き方とガラリと変わるので、管理職サイドの指導力も問われる。最初のうちは業務の切り出しから、時間の管理に至るまでサポートしてあげるのが理想。「今日からテレワークになりました、皆さん自宅でもしっかり仕事してください」では絶対にうまくいかない。「この提案書の草案を何時までに作ってね」「企画書、ここを直してほしい。間に合わなかったらAさんに引き継いで」など、細やかな指示が必要だ。

 

 ──チャットなど、デジタルツールで業務を進行する企業も多いようですが、それも苦労しているようです。

 テキストベースのやり取りは、どうしても受け手によって捉え方が変わってくる。内容が3行以上になったり、相手とのやり取りが5往復以上に進展したりする場合には、すぐさまウェブ会議や電話での音声通話に切り替えたほうがいい。文字では、言いたいことの半分も伝わらないからだ。

 デジタルツールは、リアルのコミュニケーションと比べて解像度が段違いに低い。なんかずれているなと感じたら、少しでも現実のやりとりに近い環境でコミュニケーションするべきだ。

 

■鬱を発症する「魔の2週間」

 ──テレワークがつらいという社員も増えてきています。

 テレワークは便利な反面、思わぬ負荷をメンタルにかけることもある。「魔の2週間」といって、経験上、導入してから10日目くらいで「テレワーク鬱」を発症する人が出てくる。生産性が著しく落ちたり、脱落することがないように、コミュニケーションの質にはなるべく気を配るべきだ。

 年齢や肩書を武器に、「自分のほうが上だ」とマウントを取りながら仕事を押し進めていくタイプの人は、直接顔が見えないオンライン業務で成果を出すのは難しい。また、言われた仕事を決められた時間内にこなすだけで、給料をもらおうと思っている「指示待ちタイプ」も向いていない。

 逆に自分で主体的に動いてスケジュール管理ができる人、オンライン上でのチームワーク力に優れている人、問題解決力のある人は適性があるといえるだろう。

 ──そういう意味では、テレワークによって社員の評価基準も変化しそうですね。

 今後、憂き目を見るのは40代以上の「総合職おじさん」ではないか。テレワークの普及は、「わざわざ会社に集まってやらなくても済む業務」をあぶり出した。テレワークの進化は、コロナが収まった後も不可逆的で元のスタイルには戻らない。

 

 むしろ、業務の見直しや効率化によって、社外のテレワーカーにアウトソーシングする動きが加速するだろう。そうなると、ハンコを押すだけの「総合職おじさん」は絶滅の危機に瀕する。

 ──アウトソーシングの動きが加速すると、社員もうかうかしていられなくなります。

 正社員だからといって、いつまでも大きな顔をできない時代がすぐそこまで来ている。というのも、これまで住環境や介護を理由に、物理的に出社できなかった層、いわゆる「くすぶり人材」を発掘してテレワーカーとして活用したほうが、効率よく業務が進むからだ。

 実は弊社でも、人事担当はフランスに住んでいるテレワーカーだ。彼女は国内大手のコンサルティングファームで人事マネジャーを15年勤め上げてきたベテラン。しかし、夫の海外赴任でパリ郊外に移住し、離職を余儀なくされた。輝かしいキャリアと実力があるのに、仕事といえば通訳や翻訳の仕事がたまにあるだけ。そうした中、縁あって弊社のテレワーカーとして登録。今や社員として欠かせないメンバーになっている。

 地方にも優秀な人材が眠っている。弊社に登録している売れっ子で、広告代理店から指名が絶えない「パワポ職人」がいるが、彼女は熊本県に住んでいる。三児の母でもある彼女は現在、義母の介護も担っているため、通常のオフィス勤務は厳しい状態だった。

 しかし、彼女が作成するプレゼン資料はプロもうなる出来栄え。今では、企業がクライアントに提出するための資料作成を請け負い、制作するチームのディレクターとして完璧な進行管理を熊本にいてやってくれている。彼女のおかげで発注数も10倍に急増した。

 今後は、使えない総合職おじさんよりも、こうした優秀なテレワーカーたちにアウトソーシングする動きが加速していくだろう。

 

■24時間365日の稼働も可能になる

 ──そうしたテレワークが進んでいくと、今後は新たな働き方が生まれる可能性もありますね。

 

現在、弊社に登録しているテレワーカーの14%は海外に在住しており、その拠点は22カ国にも及ぶ。こうした人材を活用し、海外との時差を生かしながら24時間365日、フル稼働のサービスも可能になってきている。

 例えば、「明日の朝イチでプレゼン用の資料がほしい」という仕事があったとする。それを日本時間の夕方にヨーロッパ在住のチームに依頼すると、彼らは始業とともに作り始める。

 そして、夜中にアメリカ在住のテレワーカーに引き継いで仕上げていけば、日本時間の次の朝には資料が出来上がっているというわけだ。これは、一部の大手広告代理店や通信会社などですでに行われている。

 こうした流れは止めることはできない。今からすべての業務を見直し、テレワークシフトを真剣に検討すべき時がきているといえるだろう。