コストライフ㈱の防災ブログ

~命を守る行動を~

#322 新型コロナ1年で収束せず  専門家は厳しい見方、五輪にも影響

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あまり人出が減っていない東京都内の商店街

 新型コロナウイルス感染症の拡大で、政府は緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大した。外出自粛や休業などがいつまで続くか、という国民の不安は大きい。そういう中で、専門家は感染確認から1年程度では収束しないだろうと警鐘を鳴らす。2021年夏に延期された東京オリンピックパラリンピックの行方にも影を落としそうだ。

 

◇外出自粛の効果、限定的

 「ここまで感染が拡大すると、今から1年では国内だけでも収束するのは難しい。一時的に感染者数が減少して収束し始めたかと思える時期も来るだろうが、それは『感染の波』ともいうべきもので、再び感染者の増加が来るだろう」

 昭和大学(東京都品川区)の二木芳人客員教授感染症)は、こう現状を厳しく分析する。感染経路の追えない患者が増え、医療機関の受け入れ能力が逼迫しているなど、まさに「医療崩壊の危機」と呼び得る状態だ、と言う。

 政府の緊急事態宣言などによる外出自粛の効果も、専門家から見れば効果は限定的なようだ。二木客員教授は「繁華街が注目されているが、平日の商店街やオフィス街は多くの人が出歩いている。外出自粛の効果を出すには、より強いメッセージを発信しないといけない」と言う。

◇「社会的免疫」獲得まで収束ない

 今後の見通しも厳しい。「ここまでくれば、国民の6割から9割が感染して抗体を有する『社会的免疫』が成立するまで、あと2~3年は感染の完全収束はないだろう。海外で実施されているロックアウトのような厳しい措置も免疫成立までの患者数の増加スピードを抑えて、医療組織を破綻させないための対策でしかない」と解説する。

 その上で二木客員教授が求めているのが、医療体制の機能維持だ。

 ウイルス感染が疑わしい患者を受け入れる「専門外来」を開設し、そこで十分な感染防御対策を整えて患者と疑われる人を集中して検査し、より分ける。「軽症や症状の無い患者は医療機関以外の施設に回し、重症者を専門医療機関が引き受ける。一部の自治体で始まったばかりで、体制整備の遅れは大きい」とした上で、「軽症者を一部自宅待機で対応しているケースがあるが、大変危険で早急な受け入れ施設の整備が求められる」と言う。

 

◇異なる流行のパターン

 世界保健機関(WHO)の重症インフルエンザガイドライン委員でもある神奈川県警友会けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師もやはり、「今から1年でこの感染症が姿を消すことは、感染力や患者数から考えてもないだろう」と、厳しい見方を示す。

 同時に、流行のパターンは新型コロナウイルスの性格によっても変わってくることが予想される。「日本のような温帯地域では、新型ウイルスがインフルエンザと似た性格なのかどうかで今後の流行のパターンは異なってくる」と言う。

 「インフルエンザのように気温が上がると活動が低下するウイルスであれば、今年の4月下旬ごろから少しずつ感染拡大のペースが落ちて8月までには拡大の勢いが目立って落ち着く。ただ夏が過ぎて10~11月には再び感染が増大し、21年の4~6月まで再び流行が続くだろう。このように2シーズンが過ぎると、ある程度流行は落ち着いてくるし、重症者の比率も減るだろう」。菅谷医師はこう予測する。

 

◇「パンデミック宣言」解消、22年か

 現在の東南アジアの流行状況を考えれば、暖かくなっても流行が続く可能性も否定できない。この場合は、「めりはり」のない形で数年続いていく可能性が高くなる。「患者数には増減があるだろうが、社会的に一定の規制を必要とする状況が続く可能性が出る」と菅谷医師は危惧する。

 新型コロナウイルスの感染で東京五輪は21年夏に延期された。ただ、季節が逆になる南半球諸国では、日本のある北半球と互い違いの形で流行が盛んになる可能性がある。

 この点について菅谷医師は「WHOによるパンデミック宣言の取り下げは、22年の春頃の南半球の流行状況を見て、同年の7~8月になるのではないか」とみる。その場合でも、公衆衛生組織の弱体なサハラ以南のアフリカや中南米中央アジア諸国では数年間は潜伏する形での流行が続く可能性が高いため「入国時の検疫などを厳しくしていく必要があるだろう」と指摘している。

 

◇行動変えるのは自主性

 緊急事態宣言前後から、「行動変容」という言葉が注目されだした。慈恵医大晴海トリトンクリニック(東京都中央区)所長で行動変容外来診療を積極的に行っている横山啓太郎教授は「ヒトという動物は、周囲の物事を認知して行動を選択する。『行動変容』は心理学に基づく言葉で、経験によって生じる比較的永続的な行動の変化だ」と解説する。

 確かに緊急事態宣言後、東京では銀座や新宿、渋谷など繁華街の人出は大きく減った。しかし毎日の買い物客を相手にするスーパーなどがある商店街の人出はあまり変わっていないようだ。

 感染拡大対策として人同士の距離を一定程度取ること(ソーシャルディスタンス)が求められている。これを浸透させるには、「日本では法で規制して徹底的に監視するのではなく、国民の意識を高めて自発的に外出を制限するように促すことが重要だ」と横山教授は強調する。長期化した場合に行動を維持するには自主性が欠かせなくなるからだ。

 ◇中高年層は発想転換へ

 個人としてもするべきことは多い。自宅外での「密閉、密接、密集の3密」を避けるのはもちろん、帰宅時の手洗いだけでなく、何かの拍子で手に付着したウイルスを取り込まないよう、口元に手を運ばないよう意識することが重要になる。企業などの組織も「最大限の想像力で密閉、密接、密集となる状況を避ける努力をし、時差出勤やテレワークの設立に努めるべきだ」と横山教授は求めている。

 このような対策は、これまで個人が培ってきた人間関係や適切な社会的対人距離を壊してしまうかもしれない。この「破壊」は大きなストレスを生み出してしまうため、横山教授はITを使った仮想現実空間などを使い、代替機能を構築していくのも必要だとする。テレビ会議システムを使った「オンライン飲み会」などだ。横山教授は「このようなアイデアは30代くらいまでの若い人に任せてお膳立てしてもらった方がよい。尻込みするような50~60代も参加してみると、意外に楽しめるのでよい」と、中高年層を励ましている。