コストライフ㈱の防災ブログ

~命を守る行動を~

#309 レジの行列で感染拡大も……なぜ日本では「ソーシャル・ディスタンス」を徹底できないのか?

 安倍首相が緊急事態宣言を出してから初の日曜日。あまりにも「ソーシャル・ディスタンス」を意識していない人が多くて、正直びっくりしました。ソーシャル・ディスタンス(あるいはソーシャル・ディスタンシング)は日本語に訳すと「社会的距離」、つまり「人との間に距離を取る」ことを言います。

 4月12日、私はやむない仕事のため、古本屋街で有名な都内の神保町に出かけました。私自身の「ステイ・ホーム(家にいろ!)」に反した行動そのものも、決してほめられたものではありませんが──日曜日だから人も少ないだろうと思い、千葉県の自宅から電車に乗り込んだのです。

 

マスクもせずにおしゃべりに夢中な若者たち

 確かに、いつもの日曜日に比べて、電車に乗る人は少ないと感じました。ですが、都内に近づくにつれ、乗客が増えていきました。自粛が要請されているとはいえ、日曜日でも出勤せざるを得ない人はたくさんいます。ですから、そのこと自体は問題には思いませんでした。

 しかし、友だち同士なのでしょう、みんなでひと塊に座って、おしゃべりに夢中になっている若い人たちがいました。その中の一人は、マスクをしていません。近い距離で友だちの顔に飛沫がかかることを、あまり気にしていない様子でした。


©iStock.com

 電車が駅に着くと、降りた客がいっせいにエスカレーターに向かいます。その中で、距離を空けて並ぼうとする人は、ほとんどいませんでした。みんないつも通り連なって、我先に改札に急ぎます。通勤ラッシュ時でないにもかかわらずです。

 

レジに並ぶ人も“十分な間隔”を空けていなかった

 神保町は、いつもの平日と比べるともちろん少ないのですが、意外とたくさんの人が歩いていました。しかしここでも、「人との距離」をあまり意識していないのではないか、という光景をいくつか目にしました。

・交差点の歩道の前で、多くの人が距離を取ることなく、信号が変わるのを待っていた。

・100円ショップのレジに行列ができていたが、十分な間隔を空けようとする人はいなかった。

・わずかに営業していた飲食店に客が集中し、狭くて密閉した店内で距離を空けず座っていた。

 

確かに「人出」は減っているが……

 ドコモ・インサイトマーケティングが提供している各地の推計データによると、4月11日(土)午後8時台の東京・新宿歌舞伎町の滞在人口は前年同週の同じ曜日と比べ72%減。同じくJR渋谷駅のスクランブル交差点を含むエリアは86%減、JR大阪駅周辺は93%も減ったとのこと。「人との接触を8割減らす」という政府の目標からすると、悪くない数字と言えるかもしれません(日本経済新聞休日要請初日の人出 歌舞伎町72%減、大阪駅周辺93%減」2020年4月12日更新)。

 

 しかし、「人出」は減ったかもしれませんが、「人と距離を取る」という点が、まったくできていないと感じました。これでは、新たなクラスターの発生を止めることは難しいかもしれません。

 

飛沫感染を防ぐには「距離を取る」がもっとも効果的

 なぜ、感染を防ぐのにソーシャル・ディスタンスが重要なのでしょうか。それは言うまでもなく、せきやくしゃみなどによる飛沫感染を防ぐには、感染者と距離を取るのがもっとも効果的とされているからです。一般に、その距離は2メートルが推奨されています。それだけ空ければ、飛沫の多くが重力によって落ちるので、感染リスクが大幅に下がるからです。

 しかし、最近の研究や報道では、2メートルでも足りないという指摘があります。たとえば、感染していることを知らずにランニングすると、息が荒いために空気中に多量のウイルスを排出するだけでなく、飛沫が後ろに向かって勢いよく広がるため、2メートル以上空けないと感染する恐れがあるというのです(飯塚真紀子「2メートルの『ソーシャル・ディスタンス』が十分ではないこれだけの理由 ランニングは横並びで!」Yahoo! Japanニュース 2020年4月13日)。

 

 いずれにせよ、「人との距離を十分に意識して取る」という行動ができなければ、せっかく人出が80%以上減ったとしても、通勤中や買い物、食事などの間に感染して、知人や家族に感染を広げてしまうかもしれません。「平日、通勤している人は無理だ」という悲鳴も聞こえてきそうです。でも、意識するとしないとでは、やはり違うのではないでしょうか。

 

政府やマスコミの公報が全く足りていない

 私は、日本でソーシャル・ディスタンスがしっかりできていないのは、一般市民のせいではなく、政府やマスコミ(とくにテレビ)の広報が不十分だからだと思います。

 このビデオを見てください。これはBBC英国放送協会)が作成した動画です。2メートルの距離がどれくらいかを理解してもらうのに、背が高いスポーツ選手やショッピングカートを並べて例えるなど、興味をひくようにおもしろく、かつ具体的に教えています(BBC NEWS Japan「2メートルってどれくらい? 感染対策に必要な距離」2020年3月29日)。


 BBCは他にも、「COVID-19にかかった人を自宅でお世話するにはどうしたら」「家にいることで人の命を助けられる 新型コロナウイルスで外出制限」など、コロナと戦うために一般市民が何をするべきかを具体的に伝える、とても優れた動画を次々配信しています。

 私は、この点が日本の情報発信で決定的に欠けていると感じています。星野源さんとの「無断コラボ動画」をツイッターに流すくらいなら、安倍首相と政府はBBCのようなメッセージ動画をつくり、ツイッターやテレビCM(ACジャパン政府広報)を使って、何度も何度も国民にソーシャル・ディスタンスを呼び掛けるべきではないでしょうか。

 

緊急事態宣言を早く終わらせるためにも

 ワイドショーをはじめとするテレビ局各社も、感染拡大や医療崩壊を阻止するために、今、一般市民は具体的にどう行動すべきか、しつこいくらいに伝えるべきです。安倍政権の休業補償政策の是非や、PCR検査の拡充、医療崩壊阻止の対策、期待できる治療薬等について議論することはもちろん重要です。しかし、そうした話題にあまりに偏り過ぎのように感じます。

 

 専門家会議を信じるならば、人の接触を8割減らせば、感染者が大幅に減らせるはずです。緊急事態宣言を早く終わらせるためにも、今、一人一人の行動変容が求められています。自粛は苦しいですが、みなさんも外出をできるだけ控え、外出したとしても人となるべく距離を取るよう、「ソーシャル・ディスタンス」を意識してください。