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#247 過去最大108兆円“コロナ経済対策”の評判が悪い「これだけの理由」

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事業規模 108兆円とは
過去最大の緊急経済対策の評判

 4月7日、安倍総理は東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象とした緊急事態宣言発令に踏み切った。108兆円、GDP(国内総生産)の2割に及ぶ過去最大の経済対策の発表をセットにして。

 

しかし、安倍総理が「GDPの2割に当たる事業規模108兆円、世界的にも最大級の経済対策」と自画自賛した経済対策に対する評判がすこぶる悪い。

 事業規模108兆円といっても、いわゆる真水といわれる国が実際に出す財政支出は39兆円に過ぎないこと、自粛要請と休業補償がセットになっていなかったこと、中堅・中小企業には200万円、フリーランスを含む個人事業主には100万円を上限とした給付金の給付基準や手続きが分かりにくい等の理由からである。

 とはいえ、今回の緊急経済対策が不十分なものだったわけではない。リーマン・ショック後の2009年4月に当時の麻生内閣が打ち出した事業規模56.8兆円、真水が15.4兆円という経済対策と比較しても、今回の緊急経済対策の事業規模108兆円、真水39兆円というものは、決して小さなものではなくむしろ大規模なものだ。

 それでも評判がすこぶる悪いのは、安倍総理の情報の出し方に問題があるからだ。

規模の使い方を間違えている

 基本的な問題は、規模の使い方を間違えていることだ。

 経済対策に関しては事前に過去最大といった威勢の良い修飾語に加え、国民一人ひとりに10万円の現金給付を行うかのような大きな期待を持たせた後に尻すぼみする格好の中身のショボい対策を打ち出すことで、過去最大の経済対策が「張子の虎」であるような印象を与えてしまっている。

 経済対策の中身がショボい内容になった裏には財務省との駆け引きがあったのではないかという疑念を抱かせるうえに、緊急事態宣言を発令した後まで営業自粛要請をする業種範囲に関して東京都を始めとした地方自治体ともめている状況を見せられる、過去最大の「108」兆円という経済規模が人間の煩悩を積み上げた結果のように見えてきてしまう。

 その一方で、諸悪の根源である新型コロナウイルス感染対策に関しては、現状を小さく見せて、状況によっては「躊躇なく」次の対策を打ち出すという「出し見惜しみ型」になっている。

 7日の記者会見で安倍総理は緊急事態宣言を期間1ヵ月としたのは、外出自粛要請によって人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することで2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、その効果を見極める期間を含めたためだという見解を示している。

 もちろん法的な限界や財政的な現実的な制約があることは十分に理解できるが、補償とセットではない実効性の高くない自粛要請で感染者の増加を2週間でピークアウトさせることができると信じる人はかなり少ないはずである。

 それは、法的措置を伴ったロックダウンに踏み切った欧米でも感染拡大を止めるのに1ヵ月、中国武漢でも2ヵ月半もかかっていることが知られているからだ。

 本来であれば、経済対策は規模だけでなく中身も期待を上回るものにし、感染防止策に関してはできる厳しめな措置をとって効果を見ながら徐々に措置を軽減していくべきであるが、今回の緊急事態宣言発令と緊急経済対策はこれが真逆になっている。

 この点が過去最大の経済対策でありながら評判がすこぶる悪い大きな要因になっていると思われる。

 

自粛要請と補償がセットになっていない

 もう一つ緊急経済対策の評判を落としている大きな要因は、自粛要請と補償がセットになっていなかったことだ。

 緊急事態宣言によって営業自粛を迫られた多くの中小零細事業者にとって、最低1ヵ月続く営業自粛は死活問題である。

 それゆえに新型コロナウイルス感染拡大防止のためには営業自粛が必要だということが分かっていても、「新型コロナウイルスで死ぬか、飢え死にするか」という究極の選択を迫られた結果、営業を継続するという決断をせざるを得ない事業者が出てくることになる。

 そしてそれが新型コロナウイルス感染のピークアウトを遅らせ、緊急事態宣言の延長、営業自粛期間の延長という負のスパイラルを招く要因となる。

 こうした負のスパイラルを回避するためにも、営業自粛に伴う補償をセットにすることは必要性不可欠である。

 安倍総理は「ある特定の業界にお願いをしても、損失は、その業界にとどまるものではありません。そこと、様々な取引をしている皆さんにも大きな影響が出ていくということを鑑みれば、個別に補償していくということはバランスを欠く」という理由で休業補償ではなく給付金で対応することにしたことを明らかにしている。

 たしかに総理の考え方ももっともなものだが、こうした考えは総理が強調してきた「前例にとらわれない思い切った措置」から遠いもの、つまり「前例にとらわれた措置」である。

だから店舗は休業できない…

 緊急事態宣言発令の効果を上げるためには、できる限り多くの国民に休業補償をする必要がある。

 店舗などが休業できない大きな理由は、店を閉めて売上がなくなっても、家賃や借入金の返済が猶予されないからである。

 換言すれば、家賃と借入金の返済を例えば3ヵ月といった決められた期間猶予できるようにすれば、営業自粛をする事業者を増やすことができるということである。

 日本の金融機関の貸付残高は、2月時点で544兆6850億円であり、平均貸付金利は約0.6%である。

 つまり、借入金の元利金返済免除に伴う金融機関の逸失利益は年間約3兆2000億円~3兆3000億円程度である。仮に借入金の元利金返済免除期間を3ヵ月だとしたら金融機関の逸失利息収入は8000億円程度、半年に延長されたとしても1兆6000億円程度に過ぎない。

 この金融機関の逸失利益を政府が肩代わりするようにしても、その財政負担は108兆円という事業規模から比べたら微々たるものなのである。

 一方家賃支払いを猶予した場合、家賃収入で暮らしている人達に大きな打撃を与えるという意見もある。

 たしかにその通りだが、それは家賃免除に応じた家主に対しては例えば100万円給付するような形で十分対処できるはずである。

 また、借入金でアパート・マンション経営をしている人にとっても、ローン返済免除と給付金とのセットであれば家賃免除は致命的な痛手にはなることはないはずである。

 家賃と借入金返済の猶予は、特定の業種に偏ることなく、全ての業種の人たちに広く行き渡るものであると同時に、収入を奪われた人たちから住む場所の心配を取り除くものでもある。

 

国民が経済的に生き残ることが重要

 今のような緊急時には、収入サイドを守るよりも生活コストを下げることで社会の延命を図ることが時間的にコストパフォーマンスの高い政策のはずである。

 政府が打ち出した真水39兆円という緊急経済対策は、一定の時間が経過すれば効果が表れるはずである。

 重要なことは、経済対策の効果が表れるための必要条件は、日本社会が、国民が経済的に生き残っていることである。

 経済対策の効果が表れる前に日本経済や国民が致命的な打撃を受けてしまったら、過去最大の経済対策も絵に描いた餅に終わってしまうはずである。

 無人島にお金をばら撒いても何の効果も得られない。

 安倍総理には「先入観は罪、固定観念は悪」という故・野村克也氏の名言を今一度噛みしめていただき、日本経済と国民が今まで通りの状態を保てるという先入観と、経済対策の規模を拡大すれば問題を解決できるという固定観念を捨てて国難に立ち向かってもらいたい。

 

現代ビジネス

近藤 駿介(経済評論家/コラムニスト)