コストライフ㈱の防災ブログ

~命を守る行動を~

#163 武蔵小杉タワマン住民の「本当の悲劇」がこれから始まる【その1】

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 一夜にして水浸しになった武蔵小杉のタワマンは、今も完全復旧していない。まだ表面化していない問題も山積している。災害大国日本で、同じ悲劇があなたの家を襲っても不思議ではない。

 
仮駐車場まで徒歩40分

 「電気や水道はすでに復旧しています。でも、すべてが元どおりになったわけではありません。背伸びして買ったマンションだから、別のところに引っ越す貯金も今のところないし、ひとまず住み続けるしかないですよね」

 こう語るのは、川崎市中原区武蔵小杉駅前の「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」(以下、パークシティ武蔵小杉)に住む60代男性だ。

 2019年10月12日に日本列島を襲った台風19号により、近隣の多摩川は一部氾濫した。再開発により「住みたい街ランキング」常連となった武蔵小杉駅前は、雨水と下水の混じる汚泥に浸かった。

 地上47階建て、総戸数643戸のパークシティ武蔵小杉も浸水被害を受けた。地下階にあった電気系統が故障し、2週間近く停電や断水が続いた。

 1階のエントランスは泥水が流れ込み、備え付けのソファはボートのように浮かんだ。タワマンでいちばん重要な設備となる6基のエレベーターも止まり、住民は階段での上り下りを強いられた。

 「台風が来た日は『1階が浸水している、排水を手伝って欲しい』と、館内放送が流れたほどです。台風が去った後、大変だったのはトイレ。高層階が水を流すと低層階の下水が逆流する恐れがあるとして、使用禁止になりました。

 水が止まっているうちは、30階以上も階段で降りて、1階の非常時に利用可能なトイレを使うか、近所の施設まで借りに行くしかなかった」(前出の住民)

 「武蔵小杉ナンバーワン」と誉れ高かった人気タワマンの悲劇。現在の住民の生活を見ると、完全復旧どころか、まだ修復されていない箇所もあった。工事が進んでいないばかりか、その費用が保険でカバーされるかもわからないと住民は言う。

 毎年のように激甚災害に見舞われる日本。高層マンションに限らず、あらゆる集合住宅に共通する「落とし穴」に、パークシティ武蔵小杉の住民ははまってしまった。

 マンション近くの歩道には、浸水した際に付いたものと思われる泥汚れが、少し残っている。そして地下駐車場出入り口には、巨大な発電機が置かれ、大きな音が響く。発電機から地下に向かって、太い送電線が伸びている。出入りしている建設業者はこう説明する。

 「水没した地下の電気系統を修理するためです。地下はまだ停電しているので、仮設電源を回さないと作業できません。色々な業者が出入りしていますが、工事が本格化したのは今年になってからだと思います。都心の建設ラッシュやほかの台風被害の対応に追われて、修理業者の人手が全国的に足りていないんですよ」

 そしてこの地下にある駐車場は、今も使用できない状態だ。収容台数はおよそ400台で、台風の前は約200台が駐車していたというが、現在は一台も残っていない。

 冒頭とは別の男性住民が語る。

 「地下駐車場の修理が終わるのは『('20年)7月以降』と、マンションの掲示板に書いてありました。台風のあと、管理会社は仮の駐車場を用意したんですが、場所は鹿島田。JR南武線で武蔵小杉から3駅のところで、徒歩で行くと40分以上かかります。

 そんなところに駐車場があっても、不便すぎて誰も使わない。おまけに、元の駐車場代は払い続けている。『住民のせいじゃないのに』と、管理会社の対応に怒っている住民もいますよ」

 

その2へ続く