コストライフ㈱の防災ブログ

~命を守る行動を~

#125 災害に強いとは言えない…台風被害で分かったタワマンの“弱点” マンション業界の秘密

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【マンション業界の秘密】

 日本は毎年のように大きな災害に見舞われている。2019年は台風の年だった。特に10月12日から13日にかけて関東から甲信越、東北に襲いかかった19号の被害は甚大だった。

 多くの住宅が流されたり泥水につかったりする映像を見せつけられると、胸が痛む。被災者たちはこれからどうやって生活を再建するのかを想像すると、同情に耐えない。

 一方、川崎市の武蔵小杉では2棟のタワーマンションが浸水被害に遭った。そのうちの1棟については電気や水道、トイレが使えない状態が長引いたようだ。

 人々の関心が高く、多くのメディアで取り上げられたが、この注目度、一時的なものかと思っていたが違った。あのエリアのタワマンの資産価値にどういう影響をもたらすのか。それともう1つは、もしかしたらタワマン自体が災害に弱いのではないかという、にわかな疑念だった。

 最近の拙著でも指摘したが、タワマンは災害に強いとは言えない。

 ハードとしての建物には問題はないはずで、震度7レベルの大地震や今回のような浸水被害に遭っても、建物が大きく損傷することはないように思われる。

 だが、災害に遭った際、生活のクオリティーをどれだけ維持できるのか、という視点に立てば脆弱で、電気が供給されなくなるとかなり厳しい。エレベーターが使えないため階段を上り下りせざるを得ず、トイレが流せない恐れがあるため、簡易トイレが必要になる。水道もしかりで手が洗えない。

 台風19号の場合、大きな被害に遭ったタワマンは1棟だった。だから管理組合同士が友好関係にあった周辺のタワマンからサポートが得られた。

 しかし、大地震の場合は周辺エリアも同時に被災する。基本的に、数日間はどこからも助けにきてくれないと想定すべきである。

 さらに言えば、行政が設置する避難所もマンション住民の流入を想定していない。避難所はあくまで、自分の住宅に居ることで命の危険がある人を対象としているはずだ。

 マンションの場合、電気がこなくてトイレが流せなくても、数日程度の期間なら「命の危険」とまでは言えない。

 結論としては、タワマンは災害にかなり弱く、階数が高くなればなるほど被害の程度は大きくなる。分譲時の価格設定とは逆比例となる。

 あの19号は、図らずもそのことを広く知らしめた。今のところ、既存のタワマンを災害から強くする有効な手立てはなく、各自で水やカセットコンロとそのボンベ、簡易トイレなど自活できる備蓄を厚くすることくらい。あとは、2020年、タワマンの脆弱性をつくような災害がこないことを祈るだけだ。

 

■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。